近日上映予定
ケリー・ライカートと響きあう映画たち
2025/06/21 ~ 2025/07/04
ケリー・ライカート Kelly Reichardt
1964年、マイアミ生まれ。長篇デビュー作『リバー・オブ・グラス』がサンダンス映画祭審査員大賞にノミネートされ注目を集めたが、資金難のため次回長編まで10年以上を要した。その間に自主製作した短編が著名監督やプロデューサーの目にとまり、『オールド・ジョイ』につながった。その後はトッド・ヘインズがプロデューサーに加わった『ウェンディ&ルーシー』がカンヌ、『ミークス・カットオフ』がヴェネツィア、『ファースト・カウ』がベルリンに出品され、ライカートは米国インディペンデント映画の重要作家となった。『ファースト・カウ』は「カイエ・デュ・シネマ」で2021年ベスト・ワンを獲得している。
本特集ではライカート監督作に加え、テーマに共通性がある作品や、ライカート監督が作品制作の際に参考にしたと述べているオルミ、アピチャッポンなどの監督作も上映する。
■特別上映
『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』
『スチームバス 女たちの夢』
『真昼の不思議な物体』
価格:1400円均一 ポイント鑑賞不可
上映予定作品一覧(全17本)
『オールド・ジョイ』
『ウェンディ&ルーシー』
『ミークス・カットオフ』
『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』
『ファースト・カウ』
『暗黒街の弾痕』
『夜の人々』
『女群西部へ!』
『美しき冒険旅行』
『冬の旅』
『聖なる酔っぱらいの伝説』
『凱里ブルース』
『偶然と想像』
『スチームバス 女たちの夢』
『真昼の不思議な物体』
『波のした、土のうえ』
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『リバー・オブ・グラス River of Grass(76分)』
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上映スケジュール
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公開:1994年
監督:ケリー・ライカート
出演:サ・ドナルドソン(リサ・ボウマン)、ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル、スタン・カプラン、マイケル・ブシェミ
青みがかった映像で映し出されるフロリダ郊外の冴えない風景、道路、街並み。バーで出会った主婦と無職男が拾った銃で人を撃ったと思い込み、勘違いの逃避行を企てる。男女には何も起こらず、銃はゴキブリ退治に使われ、車は町中をぐるぐるするだけ。夜のプールで2人で撃った銃弾から始まる“ここ”からの逃避は“ここ”で終わる。“Lovers On the Run”の系譜を解体するライカートの長編デビュー作。
©︎ 1995 COZY PRODUCTIONS
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『オールド・ジョイ Old Joy(74分)』
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上映スケジュール
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公開:2006年
監督:ケリー・ライカート
出演:ダニエル・ロンドン、ウィル・オールダム、ターニャ・スミス
もうすぐ父親になるマークと独り気儘に生きてるカート。旧友の2人が森の中の秘湯へ向かうロードムービー。オレゴンの郊外から森へと続く風景の横移動撮影が最高。隣の風呂に入ったマークの肩をカートが無言で揉み続けるシーンのぎこちなさ、互いの人生はもう交わらない寂しさ。やがて夜の街に帰りついた2人を"Old Joy"のネオンが迎える。「悲しみは使い古した喜びだから」。
©︎ 2005, Lucy is My Darling, LCC
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『ウェンディ&ルーシー Wendy & Lucy(80分)』
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上映スケジュール
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公開:2008年
監督:ケリー・ライカート
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ウィル・パットン、ジョン・ロビンソン、ラリー・フェセンデン、ウィル・オールダム
仕事を求めて車でアラスカを目指すウェンディと愛犬ルーシー。汚れた爪、跳ねた髪、繰り返す鼻歌がウェンディの境遇を表している。知らない町でいなくなったルーシーを探すウェンディ。彼女の世界が動いていくような撮影が素晴らしい。たびたび映される貨物列車や線路は移動の象徴であり、孤独をバックパックに詰め込んで貨物列車に乗り込むラストシーンにつながっていく。
©︎ 2008 Field Guide Films LLC
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『ミークス・カットオフ Meek’s Cutoff(103分)』
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上映スケジュール
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公開:2010年
監督:ケリー・ライカート
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ブルース・グリーンウッド、ウィル・パットン、ゾーイ・カザン、ポール・ダノ
19世紀のオレゴン。開拓者の三家族はガイドのミークと共に西へ向かっている。ミークの怪しい案内で遭難しかけ水も尽きかけたとき、行く手に先住民が現れ…。西部劇が不当に扱ってきた先住民と女性の共振の先に希望があるのか。謎めいた結末は観る者にゆだねられる。素晴らしいロングショットと不穏なスコアが相まって緊張感が持続する傑作。
©︎ 2010 by Thunderegg, LLC.
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『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択 Certain Women(106分)』
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上映スケジュール
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公開:2016年
監督:ケリー・ライカート
出演:ローラ・ダーン、クリステン・スチュワート、ミシェル・ウィリアムズ、リリー・グラッドストーン
女たちが生きる厳しい自然を映し出す冒頭の貨物列車の長回しが素晴らしい。弁護士は決して裕福でなく、母親は家族の関係に悩まされ、牧場で働く女性は叶わない思いを抱えている。懸命に、しかし孤独に生きる女たちを描き静かな感動を呼ぶ。女優たちの演技が素晴らしいが、特にリリー・グラッドストーンが馬に乗るシーンは息を飲む美しさ。劇場未公開。
© 2016 Clyde Park, LLC. All Rights Reserved.
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『ファースト・カウ First Cow(121分)』
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上映スケジュール
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公開:2020年
監督:ケリー・ライカート
出演:ジョン・マガロ、オリオン・リー、ルネ・オーベルジョノワ、トビー・ジョーンズ
1820年代オレゴン。料理人のクッキーと中国人移民のキング・ルーがドーナツで一攫千金を夢見るが…。貧しさの中で友情を育む2人の生活と感情がゆっくりと描かれる。静かな森に響く水の流れ、鳥の囀り、風の音。自然と感情の揺れを捉えるような映像が続く静かな西部劇。「鳥には巣 蜘蛛には網 人には友情」。
©︎ 2019 A24 DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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『暗黒街の弾痕 You Only Live Once(86分)』
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上映スケジュール
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公開:1937年
監督:フリッツ・ラング
出演:ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー、ウィリアム・ガーガン、バートン・マクレーン、ジーン・ディクソン、ジェローム・コーワン
仮釈放中のヘンリー・フォンダと結婚したシルヴィア・シドニー。しかし、前科者との偏見はどこまでも付きまとい…。ボニー&クライドの物語にインスパイアされたフリッツ・ラングのハリウッド時代の傑作。たちこめる霧、陰影の強調された緊迫感溢れる画面が観るものに迫る!
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『夜の人々 They Live by Night(96分)』
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上映スケジュール
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公開:1948年
監督:ニコラス・レイ
出演:ファーリー・グレンジャー、キャシー・オドネル、ハワード・ダ・シルヴァ、ジェイ・C・フリッペン
犯罪仲間と世間の目に追いつめられた男女の逃避行を描いたニコラス・レイ初監督作品。モーテルに身を寄せ、夜中に簡易結婚式場で結ばれる。夜に生きることを宿命づけられた2人の愛と束の間の幸福を描いた切なくも初々しい青春犯罪映画。ゴダールが「精神においてA級」と評価したことでも知られる傑作。
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『女群西部へ! Westward the Women(117分)』
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上映スケジュール
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公開:1951年
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
出演:ロバート・テイラー、ドニーズ・ダルセル、ビヴァリー・デニス、ジョン・マッキンタイア
花嫁候補130余名を連れた幌馬車隊がカリフォルニアへの3千キロの旅に出る。到着まで3人に1人は死ぬから多めに募集、という過酷すぎる旅。雇った男たちは性欲に負けて殺されたり逃げたりで、残るは2人に。自ら銃を持ち、馬車を崖から降ろし、砂漠を行く女たちの頑張りと、死んでいく者への哀悼。最後に押し寄せる感動をどう表現したら良いのか分からない傑作!
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『美しき冒険旅行 Walkabout(100分)』
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上映スケジュール
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公開:1971年
監督:ニコラス・ローグ
出演:ジェニー・アガター、リュシアン・ジョン、デヴィッド・ガルピリル、ジョン・メイロン、ロバート・マクダーラ
オーストラリアの原野で取り残された都会育ちの姉と弟。放浪するうち通過儀礼中のアボリジニの少年に出会い…。砂漠での原始的な生の営みがグロテスクかつ美しい。3人で水遊びしてみても、姉と少年は理解しあえず各々が元の世界に戻っていく。少年の求愛ダンスが切なく、ラストの「失われた可能性」の幻視は無常に満ちている。
© 1971 Si Litvinoff Film Productions. All Rights Reserved.
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『冬の旅 Sans Toit ni Loi(105分)』
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上映スケジュール
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公開:1985年
監督:アニエス・ヴァルダ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイス、ヨランド・モロー、パトリック・レプシンスキー
少女の凍死体が発見され、彼女のたどった道のりが回想で描かれるロードムービー。冬の大地をひとり彷徨うサンドリーヌ・ボネールの野生的な佇まい、“薄幸”や“無垢”といった安易なイメージに回収しない語り口がクール。人との淡い触れ合いがあっても本質的に孤独なボネールの内面が描かれないゆえに、観る者は彼女に魅せられるのだ。
© 1985 Ciné-Tamaris / films A2
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『聖なる酔っぱらいの伝説 La Leggenda del Santo Bevitore(128分)』
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上映スケジュール
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公開:1988年
監督:エルマンノ・オルミ
出演:ルトガー・ハウアー、アンソニー・クエイル、サンドリーヌ・デュマ、ドミニク・ピノン
セーヌ川の橋の下をねぐらにするルドガー・ハウアーが、見知らぬ老人から200フラン貰ったことから始まる数日間の奇蹟。ハウアーは「教会のミサで返す」という約束を果たそうとするが…。ワインを飲み続け意識が遠のき、過去の記憶がフラッシュバックする。夕暮れの赤から夜の青、窓の外の大雨などカメラが美しい。「神よ、すべての酔っぱらいに美しい死を与え給え」。ヴェネチア金獅子賞受賞作。
© RTI S.p.A.
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『凱里ブルース 路邊野餐 Kaili Blues(111分)』
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上映スケジュール
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公開:2015年
監督:ビー・ガン
出演:チェン・ヨンゾン、ヅァオ・ダクィン、ルナ・クォック、ユ・シシュ
ビー・ガンのデビュー作。医師が消えた甥を探しに行くロードムービーだが、旅を進めるにつれ現在と過去と夢が混じりあって世界の輪郭が曖昧になっていく。乗り物の描写が印象的で、幻の街に移る後半の40分にわたる長回しは観る者を画面に引きずりこまずにはいない。水の使い方などタルコフスキーの影響が感じられる。
© Blackfin (Beijing) Culture & MediaCo., Ltd -Heaven Pictures (Beijing) The Movie Co. Ltd., -Edward DING -BI Gan / ReallyLikeFilms
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『偶然と想像(121分)』
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上映スケジュール
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公開:2021年
監督:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉
何気ない始まりから⼀転、⼈間の本性が炙り出され、女性たちの人生が切り取られる構成が素晴らしい。どこまでも鮮やかな語りによって緩やかに繋がりつつ呼応し合う3つの物語。シューマンのピアノ曲によって彩られる美しいオムニバス。そして何より文句なしに面白い。
©︎ 2021 NEOPA / Fictive
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『スチームバス 女たちの夢 Steaming(92分)』
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上映スケジュール
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公開:1985年
監督:ジョセフ・ロージー
出演:ヴァネッサ・レッドグレーヴ、サラ・マイルズ、ダイアナ・ドース、パッティ・ラヴ、ブレンダ・ブルース、フェリシティ・ディーン
公共サウナの大理石の壁に、階層を服とともに脱ぎ捨てた女たちの声がポリフォニックに響きあう。私生活のあけすけな話からサウナの閉鎖へと話は移り、シェルターであり繋がりの場所であるここを守ろうと共闘していく女たち。ジョセフ・ロージーの遺作である素晴らしいシスターフッド映画。ラストに放たれる風船が彼女たちを祝福している。
© 1985 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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『真昼の不思議な物体 Mysterious Object at Noon(83分)』
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上映スケジュール
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公開:2000年
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
タイを旅しながら出会った人たちに作り話を語ってもらう。物語は次々と変容し予測不能な展開を見せる。ドキュメンタリーでありながら、“虚構”とは何かを問い続ける二重構造が新鮮。言葉と思考のロードムービー。
作品提供:認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
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『波のした、土のうえ(68分)』
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上映スケジュール
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公開:2014年
監督:小森はるか、瀬尾夏美
出演:阿部裕美、鈴木正春、紺野勝代、瀬尾夏美
何もかも流された陸前高田の復興事業の映像に、3人の被災者の話をもとに瀬尾夏美が書いた文章の朗読が重なる。懐かしいものを語る彼らの言葉はいつも場所に紐づいているが、“復興工事”によって僅かに残った土地の記憶ももうすぐ消されてしまう。失った過去と見知らぬ未来の間にたたずむ人たちの存在を真摯に記録した作品。
新着情報
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