近日上映予定
ジャン・グレミヨン&ジャック・ベッケル特集
2025/05/31 ~ 2025/06/20
ジャン・グレミヨン Jean Grémillon(1902 - 1959)
シネマテーク・フランセーズの館長を務めたが(1943~58)、その評価は遅れ、呪われた映画作家として知られる。ヌーヴェル・ヴァーグのゆりかごと言われるコクトー、バザンらのシネクラブ「オブジェクティフ49」主催「呪われた映画祭」の賛同人。ゴダールが熱狂的に支持したと言われている。ごく最近「カイエ・デュ・シネマ」誌はグレミヨン特集を組んだが、「1950年代の『カイエ』はなぜグレミヨンを無視したのか」というインタビューで、ジャン・ドゥーシェは当時を振り返り、グレミヨンがルノワールと並ぶ最も偉大な映画作家であることは自明だったが、「ラ・ルヴュ・デュ・シネマ」誌が盛んに擁護していたためグレミヨンを忘れてしまったと語っている。
ジャック・ベッケル Jacques Becker(1906 - 1960)
ルノワールと少年時代から親交があり30年代に彼の助監督を務めたベッケルをトリュフォーは映画作家として擁護し、ベッケルもヌーヴェル・ヴァーグの作家たちと交流が深かった。ゴダールは追悼文で“ジャック兄”と呼びかけ「フランス映画を撮るのに真にフランス式であり続けたのはジャック・ベッケルただ1人だけだった。」との賛辞を捧げた。
■特別上映『燈台守』協力:国立映画アーカイブ *通常料金
■特別講義 5月31日(土)16:40
ゲスト:蓮實重彦さん 料金:1500円均一(ポイント鑑賞不可)
※上映付ではありません。
※動画撮影・録音はご遠慮下さい。なお、このイベントはシネマヴェーラ渋谷に著作権があります。
上映予定作品一覧(全21本)
『混血児ダイナ』
『愛欲』
『番兵、気をつけろ!』
『曳き船』
『この空は君のもの』
『高原の情熱』
『白い足』
『迷宮の女』
『ある女の愛 』
『最後の切り札』
『赤い手のグッピー』
『偽れる装い 』
『幸福の設計』
『七月のランデヴー』
『エドワールとキャロリーヌ』
『エストラパード街』
『アラブの盗賊』
『現金に手を出すな』
『モンパルナスの灯』
『燈台守』
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『父帰らず La Petite Lise(74分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1930年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ピエール・アルコベール、ナディア・シビルスカイア、ジュリアン・ベルトー
嫉妬から妻を殺しギアナの刑務所にいた夫がパリに帰ってくる。彼は愛する娘を訪ねるが…。ごく初期のトーキーだが、窓や扉を挟んで聴こえてくる会話や音楽や汽車の音が印象的。クラブで歌い踊る黒人のステージも不穏な雰囲気で、一度に父母を失って転落した娘の運命を暗示するようだ。一部欠損があることをご了承の上、ご覧ください。
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『混血児ダイナ Daïnah La Métisse(51分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1932年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ローレンス・クラヴィウス、シャルル・ヴァネル、アビブ・ベンリア、ガストン・デュボスク
夫に冷めた妻が船上でチヤホヤされ、増長して悲劇に見舞われるという物語に、人種や階級という要素が重なる。赤道祭に行われる奇妙な仮面舞踏会や黒人の魔術師が、船上という限られた空間を異世界のように見せている。最もミステリアスなグレミヨン作品。
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『愛欲 Gueule d'Amour(94分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1937年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ジャン・ギャバン、ミレイユ・バラン、マルグリット・ドゥヴァル、ピエール・エチュパール、ルネ・ルフェーヴル
モテモテで“色男”と呼ばれる兵隊のギャバンはミレイユ・バランにのめり込み…。一目惚れした女をパリまで追い駈け、関係を持つと彼女の屋敷で偉そうに振る舞うギャバンがストーカーすれすれ。美しく贅沢で気まぐれなバランはひとつの謎であり、自分のものにしようとする男たちには悲劇が訪れるのだ。クライマックスの再会シークエンスの切り返しが素晴らしい!
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『番兵、気をつけろ! ¡Centinela, Alerta!(74分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1937年
監督:ジャン・グレミヨン、ルイス・ブニュエル
出演:アナ・マリーア・クストディオ、アンジェリーオ、ルイス・エレディア、パブロ・ヒダルゴ
クズ男の子供を産んだカンデラスを助けたのは2人の兵隊。やがて歌の上手い兵隊のアンヘリーリョは歌手になり彼女に店を持たせるが、そこへ食い詰めたクズ男が現れ…。もう一人の兵隊で靴磨きになるティブルシオのキャラが最高に楽しい。グレミヨンとブニュエルの共同監督作品で、ナンバーはスペイン的だが演出はハリウッド的な心温まるミュージカル。
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『曳き船 Remorques(85分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1941年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ジャン・ギャバン、ミシェル・モルガン、マドレーヌ・ルノー、フェルナン・ルドゥー
難破船を助ける曳船の船長ジャン・ギャバンは、仲睦まじい妻がありながら船上で出会ったミシェル・モルガンと愛し合うようになる。脚本を担当したプレヴェールによるセリフの魅力と、嵐中の船や浜辺を映し出すカメラの素晴らしさ。「雷が私を呼んでいる」とモルガンは去り、ギャバンは過酷な運命にさらされ現実を見失う。ラスト、彼の姿に聖書の言葉が重なる。傑作!
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『この空は君のもの Le Ciel est à Vous(107分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1943年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:マドレーヌ・ルノー、シャルル・ヴァネル、レオンス・コルヌ、ジャン・ドビュクール
実話の映画化で、ドイツ占領下のフランスで制作された作品。空に憧れる夫に影響されてパイロットになった主婦。女性の最長飛行距離を達成しようとする妻と彼女を徹底的に応援する夫だが、娘のピアノを売ってまで機体を改造する二人の過剰さが夫婦愛を超えた何かを感じさせる。
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『高原の情熱 Lumière d'Été(110分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1943年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:マドレーヌ・ルノー、マドレーヌ・ロバンソン、ジャヌ・マルカン、レイモン・エイモス、ポール・ベルナール
高原にポツンと経つホテルを舞台に、客の女とアル中の恋人、変人の富豪、ガテン系青年、ホテルの女主人が繰り広げる奇妙な恋愛ドラマ。『ゲームの規則』を思わせる仮装舞踏会の狂乱からダム建設現場へと続くクライマックス、そして凄惨なラストへ。呪われた作家ジャン・グレミヨンによる予想不能の怪作。
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『白い足 Pattes Blanches(104分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1949年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:シュジー・ドレール、アルレット・トマ、ポール・ベルナール、フェルナン・ルドー、ミシェル・ブーケ
ブルターニュの小さな港町。酒場の主人ジャックが連れ帰った娼婦オデットは、軽い気持ちで没落伯爵(“白い足”)と異母弟モリスの2人と関係を持ち…。歪んだ人間たちの愛憎を描きながら、その映像はあくまで詩的。ジャックとオデットの結婚パーティーのダンスと、伯爵を慕う酒場の使用人ミミが幻想の中で踊るダンスが美しい。ロカルノ映画祭特別賞受賞作。
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『迷宮の女 L'Étrange Madame X(86分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1951年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ミシェル・モルガン、アンリ・ヴィダル、アルレット・トマ、モーリス・エスカンド
出版社社長と結婚し社交界の女王になったミシェル・モルガンが、労働者の青年と恋に落ち妊娠するが…。仕事に妻を利用する夫は、妻の不倫を知りつつ放置している。役割しか求められない女の愛の行方が悲劇的。成熟したモルガンの美しさ、特に座る姿がハッとするほどエレガント。
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『ある女の愛 L'Amour d'une Femme(103分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1953年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ミシュリーヌ・プレール、マッシモ・ジロッティ、ギャビー・モルレー、パオロ・ストッパ
仕事か結婚かを迫られた女医が、孤独への不安からキャリアを捨てようとする。全ての女性に通じる愛と人生の物語。完璧なタイミングで鳴る鐘や電話の音、写される写真、そして内面の嵐を映しだすようなクローズアップ!嵐に翻弄される小船や詳細な手術シーンも素晴らしい。残酷なラストに声を失う傑作。
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『最後の切り札 Dernier Atout(101分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1942年
監督:ジャック・ベッケル
出演:ミレイユ・バラン、レイモン・ルーロー、ピエール・ルノワール、ノエル・ロクヴェール
警察学校の首席争いの決着をつけるため、本当の殺人事件解決に挑むことになったモンテスとクラランスだが…。ベッケルの初長編。ムチャな設定だが、ライバルと見せかけて熱いバディというのがキモ。米国人ギャングの妹(ミレイユ・バラン)を利用して敵の懐に飛び込むクラランスのふてぶてしさ、真っ暗闇での敵との対峙がカッコいい。
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『赤い手のグッピー Goupi-Mains Rouges(104分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1943年
監督:ジャック・ベッケル
出演:フェルナンド・ルドゥー、ジョルジュ・ローラン、ロベール・ル・ヴィガン、ブランシェット・ブリュノワ
財産を守るため血族間で結婚を繰り返すグッピー一族。食堂の主人はパリに住む息子を呼び寄せるが、そこで盗難、殺人事件が発生し…。互いをあだ名で呼び合う片田舎の変人一家で起こる犯罪とその顛末をシュールかつ軽いホラー風味で描く群像劇。一族のハグレ者"赤い手"が事件の糸を解きほぐす!
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『偽れる装い Falbalas(112分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1945年
監督:ジャック・ベッケル
出演:レイモン・ルーロー、ミシュリーヌ・プレール、ジャン・シュヴリエ、ガブリエル・ドルジア
デザイナーのフィリップは、絹織物業者の婚約者ミシュリーヌに一目惚れし強引に口説くが…。女性をデザインのための道具としか思わないフィリップが、真剣に人を愛したことで壊れていく様を緊張感溢れるタッチで描く。狭い屋内の中でカメラが動き、人が出入りしドアが開き閉じる。そしてショーをクライマックスとして、恐ろしくも美しいラストに突入する。
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『幸福の設計 Antoine et Antoinette(90分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1946年
監督:ジャック・ベッケル
出演:ロジェ・ビゴー、クレール・マッフェ、ノエル・ロクヴェール、アネット・ボワーヴル
アパートに住む若く貧しい夫婦。たまたま夫が買った宝クジが当たって大喜びするも、クジが行方不明に!? ハラハラさせつつ、二人で築いた幸福な生活を描くベッケル“パリ下町3部作”1作目。お金も大事だが愛がないとね!愛らしい妻に言い寄る商店主の気味悪さも一見の価値あり。
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『七月のランデヴー Rendez-Vous de Juillet(99分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1949年
監督:ジャック・ベッケル
出演:ダニエル・ジェラン、ブリジット・オベール、ニコル・クールセル、モリス・ロネ、ピエール・トラボー
1949年パリを舞台に、夢と恋とジャズとダンスで綴る青春群像劇の傑作。探検家志望のリュシアンに始まり、仲間たちが次々と紹介されていく手際が見事。「何もしなければ俺たちは消えちまう!」というリュシアンの悲痛な叫びに焦燥が滲む。夢に向かって飛び立っていく者たちと、残酷な現実に晒される者に分かれたラストが苦い後味を残す。
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『エドワールとキャロリーヌ Édouard et Caroline(92分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1951年
監督:ジャック・ベッケル
出演:アンヌ・ヴェルノン、ダニエル・ジェラン、ジャック・フランソワ、ジャン・ガラン
ベッケルの“パリ下町3部作”2作目。芽が出ないピアニストの夫とお嬢様育ちの妻。妻の叔父が社交界の名士を集め演奏を披露させようとするが、ベストがないことから演奏会当日だというのに大喧嘩に! 服をきっかけに魅力的なドラマを引き出すベッケルの演出は最高。シャツとブリーフ姿でうろつく夫も可笑しい。
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『エストラパード街 Rue de L'Estrapade(98分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1952年
監督:ジャック・ベッケル
出演:アンヌ・ヴェルノン、ルイ・ジュールダン、ダニエル・ジェラン、ミシュリーヌ・ダックス
カーレーサーの夫の浮気が発覚。妻はエストラパード街の部屋で別居生活を始めるが…。ボロアパートの隣人にストーキングされたりデザイナーに襲われそうになる妻、ヨリを戻そうとする夫。展開はありがちだが、無邪気な妻役のアンヌ・ヴェルノンの美しさ、感情の高まりの描写(雉を投げる夫!)、夫妻の家政婦お婆さんのトボケぶりが楽しい“パリ下町3部作”最終作。
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『アラブの盗賊 Ali-Baba et Les 40 Voleurs(89分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1954年
監督:ジャック・ベッケル
出演:フェルナンデル、サミア・ガマール、エドゥアール・デルモン、ディーター・ボルシェ
盗賊の宝物を「開け、ゴマ!」の呪文で手に入れ、愛する女性と貧しい人々を救うアリババの物語。原作の残酷さを排してカラッとしたコメディに仕上げたベッケルの娯楽作。豪邸での追っ駆けっこからの千人越えのエキストラの行進。突然の砂漠のロングショットからの盗賊襲撃の流れも素晴らしい。モロッコ撮影で異国情緒溢れる雰囲気も貴重。
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『現金に手を出すな Touchez pas au Grisbi(96分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1954年
監督:ジャック・ベッケル
出演:ジャン・ギャバン、ルネ・ダリー、ジャンヌ・モロー、ドラ・ドル、リノ・ボリニル、ポール・フランクール
引退を決めたギャングが、マヌケな仲間のせいで“最後のヤマ”の後始末をするはめになる。静かなギャング映画で、ジャン・ギャバンの渋さに痺れる一作。男女かまわずくらわすビンタ、カッコいいテーマ曲、ダブルのスーツ、美しい恋人。ベッケルの美意識が隅々までいきわたったフレンチ・ノワールの傑作。
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『モンパルナスの灯 Les Amants de Montparnasse(108分/デジタル)』
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上映スケジュール
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公開:1958年
監督:ジャック・ベッケル、マックス・オフュルス(ノンクレジット)
出演:ジェラール・フィリップ、アヌーク・エーメ、ジェラール・セティ、リラ・ケドローヴァ、リリー・パルマー、リノ・ヴァンチュラ
モディリアーニを美化した脚本を拒否し、孤独と苦悩に焦点を当てたベッケルの作品。素晴らしいロケで撮られたパリを背景に、貧困と病苦を酒で紛らわす画家、彼を支える画商、家族を捨てて妻になる画学生の関係を描く。画家と同じく夭折したジェラール・フィリップと、ヒロインのアヌーク・エーメが美しすぎる。そして画商のリノ・ヴァンチュラが死神のような存在感でラストを締める。
© 1958 Gaumont - Astra Cinematografica - Continental Film GmBh
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『燈台守 Gardiens de Phare(74分/サイレント/35mm)』
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上映スケジュール
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公開:1929年
監督:ジャン・グレミヨン
出演:ポール・フロメ、ジエモン・ヴィタル、ジェニカ・アタナジウ
父親と息子が孤島の燈台守としての仕事を任されるが、息子が狂犬病にかかり…。水を恐れる狂犬病患者が海に囲まれている残酷さ、発狂した息子と日々の仕事を続ける父の苦悩が描かれる。光と闇のコントラスト、長い階段、荒れ狂う海、狂犬病の犬…。異様なイメージが横溢する傑作。『ライトハウス』(2019)の元ネタでもある。
新着情報
一覧を見る- 2025/04/27
- 特集「ケリー・ライカートと響きあう映画たち」トークショーのお知らせ
- 2025/04/13
- 「ジャン・グレミヨン&ジャック・ベッケル特集」特別講義のお知らせ
- 2025/03/18
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- 2025/03/15
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- 2025/02/25
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